トランジェントの世界2


何故トランジェントにこだわる奴(レジェンド的オーディオメーカー創設者に多め)がいるのか、オーディオに取ってのトランジェントとは?

一言で言うと『自然の摂理に則った速度』と言えます。真のトランジェントは静かで穏やかです。自然音がそうであるように。

そのためには楽器の発音機構について説明が必要です。ほとんどの楽器…生き物の声もピストニックモーションではなく分割振動です。波動モーションとも言えます。前後運動ではなく波打ち空気を揺らすわけですな。

GAVAN氏もそこを相当気にされておられました。発音機構が違うからこそ一見似たような音が出ていても自然な音のあるべき機序、そして広がりようが違う、と。例えば叩いていらっしゃる和太鼓は円心状に音が広がりますが超低音が出るハイエンドスピーカーでも物によっては露骨に『面』でしか出てこないものがある、と。それは超低音の話ではなく実は高域の話なのですな。ですので特殊ですが『バイオリンツイーター』をつかってらっしゃる。まさに波動モーション。

ですので波動モーションの方が理に叶っている、そして特に立ち上がりが高速だったりハイエナジーの楽器…そう、特にドラム、シンバル等はピストニックモーションでは速度的に再現は不可能です。

特にマンガーを聴くと驚きますが、非常にマイルドで聴きやすいのにシンバルとなると恐ろしく金属音がリアルに聴こえます。自然の摂理に則った発音機構であるので全く異質の自然さを持ちます。スゲェ壊れるけど。

まあそれを言うなら『マイクがどうなの?』という話になります。リボン、コンデンサは波動モーション。ダイナミック型はピストニックモーションです。当方で聴くとドラムの録音の善し悪しが良くわかりますが、ほとんどが立ち上がりが全く録れてません。南無三。


トランジェントには高調波的立ち上がりと立ち下がりがあります。(こう言うウォーターフォールでわかる話ではないミクロ的世界のお話)

立ち下がりはどうしようもありませんが立ち上がりの高調波はどのスピーカーでも良くできます。スーパーツイーターです。特にソフトドームには必須かも知れません。

やはり波動モーション系のスーパーツイーターでしょう。高名なスーパーツイーターはほぼ全て買いましたが高域を伸ばす訳で無ければやはり最速はこれ。硬くて重い振動板で空気を殴りつけ、シンバルのあの音すら再現に至る。軽くて薄くて大きいピエゾ素子だと剛性が足りず癖が乗り、金属音は再生不可。無論どのスピーカーにも有効です。制作者はマンガーにも載せてたくらいですから…

http://www.ippinkan.co.jp/airbow/product/tweeter/clt_5.html

しかしGAVAN氏に『速い』『位相か凄い』と言って頂ける程のトランジェントを得たのは最近で、スピーカーや機器だけでは絶対に完結しないです。予想以上にケーブル等での位相のモジュレーションも影響が大きい。特にアースケーブル。

逆に言えば色々な要素の蓄積でトランジェントは遅くなります。しかし大抵世にある『ハイスピードケーブル』(細身の単線が多い)などは振動のピークを伴い、癖が載り、紛い物の輪郭で速度を演出しているので市民権が得られないのです。


なお一応ウクライナから人類の遺産的旧ソ連極細ヴィンテージケーブルのリールが来ました。0.3mmエナメルワイヤー。もう手に入らない。最後かと思われます。聴いてみて合格したら頒布再開します。真のトランジェントを持つ究極ワイヤー。0.2mmに比べて癖が増えてなければ良いのですが…


“トランジェントの世界2” への4件のフィードバック

  1. ピストニックモーションと波動モーション
    これは物凄く違いを感じます。
    ピストニックモーションでシンバルを再現しようとすると何故か耳に刺さる印象。
    ヴァイオリンツイーターは、立ち上がりとともに立下りも速く感じます。(実際、開発元で見せていただいたデータでも確認)
    シンバルなどの再現が相当改善するとともに、速いのに柔らかい。

    CLT-5
    以前いくばくか前のモデルを借りて試したことがあるのですが、全く使いこなすことが出来ませんでした。
    当時のSPではスピード感が揃わなかった…
    伺って、カップ、ボウ、エッジの叩き分けのリアルな再現。ひいては、スティックが面に当たって跳ね返るところまでも描き切っており、しかも全く耳に刺さらない。
    実は白眉の出来と理解。
    今であれば拙宅でも合わせることが出来るのではないかと結論に至り、再度借りて試そうと思った次第。

    もはやオーディオの本道から外れて行っている?気がするところではありますが(苦笑)
    得難い経験をありがとうございました。

  2. 拝承しました!
    なお、「伺って…」以降が切れておりました。
    正しくは
    「伺って、実際にシンバルの再生を聴かせていただいたところ…」
    です(汗)

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