チョークコイルの話


スイッチング電源には特にチョークコイルは必須ですしチョークの話は色々書いてきましたが奥が深く積み上げてきたチョークの膨大なノウハウはとうてい書ききれる物ではなくちょっとずつ小出しで書いていこうと思います

今回は巻線とコアのサイズについてのご要望がありました

コアのサイズ

基本的にはそら大きいに越したことはありません。が、スイッチングの前後でサイズの要求がまるで違います

ではスイッチングの前後でどちらが大きい必要が?答えは後です。何故なら電流が大きいから。でもACアダプターの後についてるコアや或いは後付けのアクセサリーとしてのコアはゴミのようなサイズです。有効ではあるでしょうがもっと欲しい

なお大きいとデメリットはあるのでしょうか?ひとつは純粋にケーブル長でimpedanceが上がること。コイルを作るなら線は少し太めで行きましょう。impedanceの低さは音質に多大な影響を与えます。

ただ抵抗とは直流だけではなく交流抵抗、リアクタンスがあります。これの有り様、周波数特性的な癖は音響的な癖に繋がります。

これはコアの材質が主です。巻き方も関わりますね。以下に巻き方と周波数特性の実験データです。

http://jr7ibw.com/interfere/evaluation_2.html

何か素晴らしい神データを拾ったのでありがたくご紹介させていただきます

コモン・モードノイズフィルターとしての性能はw1JR>バイファイラ>キャンセル巻きです。ただキャンセル巻きは工業的に作りやすいので完成品はこれしか売ってません。キャンセル巻きは対称性が低くコモン・モードノイズ低減能力は低いですがその代わりノーマルモードノイズを取る力もあります。決して悪いわけではなくケースバイケースです。

バイファイラとw1JRはご覧のとおり周波数特性の癖の無さ(Q)がまるで違う。広さも違いますね。工業的には制作困難であり個人がメーカーを上回れるポイントです。

ただし工業メーカーほど太いエナメル線は巻けないのが玉に瑕。特にw1JRは2本同時に巻くので硬い!握力とかピンチ力が必要そうです。Φ3mmとか不可能です。どうしてもやりたいならゴールドジムとかで野生のマッチョを捕まえてプロテイン決済でやってもらって下さい。

巻線

何故単線が多いのか?より線だとコイルの熱に弱くなるんですね。一番強いのは実はリッツ線で、そもコイルの発熱対策で生まれた経緯がありますな。確か150年前位かな?

まあそんなギリギリの電流流さないでしょうから(音質的に流すべきではない)もっと音響的な観点から。どんなケーブルを選ぶべきか?

正解はないです。

『正解は環境で変わる』のですな。あと巻く技量や、環境次第での調整。使い途。それらでまるで違う。我輩もやってみないとわからない事があり、何タイプも作り分けてます。

ふんわりと指針を言うと、まずは線自体の残響の周波数特性。例えばBELDEN19364の中身はそこらへんに非常に癖がないです。なので強力な安牌ではある。ただ単線に比べるとちょっと収束の僅かな遅さが気になる事もなくはない。

単線は振動のQがありそれが癌となりうりますが基本的にはそのQ以外は振動の収束が早く音響的にもハイスピードで滲みが少ない。つまりQを殺す工夫をするか、さもなくばQがあっても気にならない部位に使うと良いわけです。サブウーファーにはQが気にならないので単線が素晴らしいですし(サブウーファーへの信号ケーブルもそうで特殊な要求がある)、癖が赦されない繊細なネットワーク機器にはBELDEN使ってます。

あと巻線が長いとなおさらQの影響を受けるので気を付けるべきです。Qの殺し方ですが満身の力で強く巻くとか紙テープで巻くとか箱に黒糖とともに詰める、とか色々あります。が、いずれにせよ残響のf特に影響は与えるので本当に『音で判断して詰めていく』必要があります。例えば我輩が何処かにフィルターを持ってったとして、完璧にハマる事は少ないです。そこでチューニングしないといけないわけですね。


“チョークコイルの話” への14件のフィードバック

  1. 第1段ありがとうございます。
    ちょっとした確認させてください。
    “ではスイッチングの前後でどちらが大きい必要が?答えは後です” とありますが、前回の記事でも???と思ったのですが、後ろとは「AC入力側」ということですか?それとも、「DC出力側」ですか?
    また、もう一点。DC出力側の巻線もベルデン押しでいいのでしょうか?
    最近、ダイトロン電源とLT3045を購入し、AC側チョークにベルデン、DC出力側にオヤイデを巻いてますが、どーも、イマイチなもので、、、、。

      • すいません。
        昨日までは、楽曲の音圧がピークになると歪感を感じていたのですが、先程、LT3045からDCケーブルまでのオヤイデをケーブルを40cm から10cmに切り詰めたら、治ってしまいました。
        色々とツメていかなければならないようです。

        • なるほど、多分ノイズをちょうど拾ってしまう長さだったのでしょうか
          EMCは人智を超えた魔境なので到底読めません
          ともあれよかったです!

  2. グルマンさん、こんにちは。いつもお世話になっております。

    「ではスイッチングの前後でどちらが大きい必要が?答えは後です。」

    ですが、大きい、小さいのイメージ、もし可能であれば、具体的な材料の型番など、あくまでも目安ということで結構ですので示していただけますと、とっかかりとなって助かります。

    ご検討いただけますと幸いです。

    • そうですね、まあファインメットもアモルファスも種類やメーカー色々で型番だと難しいので大きさでふんわり言うと

      ・入力側
      外径60mm以上
      高電流の部位でワイヤーを太くする場合はもっと大きくても良い
      ・出力側
      直径80mm以上
      基本的にはコアの厚さ(外径と内径の差)は厚い方がインダクタンスを稼げて良い
      音も癖が少ない傾向がある

      • ありがとうございます。
        出力側はコアの外径と内径の差があったほうがいいのですね。
        参考にさせていただきます。

  3. ところでHigh Fidelity Cables MC-1 Pro
    の中身ってどうなってるのか気になります

    分解されたことありますか?

    回路になってるんでしょうか?
    それとも何かの素材で埋め尽くされているんでしょうか?

    • バラシようがなくあれの分解はしてませんが構造は無論把握してます
      他の大型の電源装置は逆に分解してるんですがね
      構造は
      ネオジウム磁石の棒がhot cold groundそれぞれに通電されてます
      でhot ground間、cold ground間に小さな容量のオリジナルコンデンサが付いています。ようはYコンデンサと言われる構造です。
      そのコンデンサは脚がスーパーパーマロイで磁力の影響を猛烈に受けます
      そして磁力の力で電流を超集中させYコンデンサとしての威力を尋常でなく上げているようです

      • ありがとうございます
        なんかもうめちゃ宇宙な話ですね
        量子力学的な世界ってやつですかね
        深いです

        • これはschultz氏がデモンストレーションしてましたが、空中にバラバラに放電された紫の電流が、磁力を加えるとビシッと収束してビームのようになります
          目で見えるレベルですね

          • その仕組みをオーディオアクセサリーにしようとする発想と、知識がすごいですねー
            音色が良くなりそうです

  4. スイッチングの入力にコアを入れた方がノイズが減る
    前と後だと後の方がデカいコアが必要
    太い線の方がimpedanceが低くて良い

    ただ、細いエナメル線1.2mmから太い2.0mm単線に変えると音が遅くなり癖が乗ってしまったのですがこれも適材適所でしょうか?

    • さすがです
      いや、本当に素晴らしい

      その通りです
      要素としては
      ・フルレンジに影響する部位か(サブウーファーは基本高音の癖とか影響しません)
      ・電流
      で決まります
      ネットワークやデジタル機器ならばフルレンジなので基本的には共振が乗らないワイヤーが良いです
      そしてワイヤーも単線は太い方が乗りやすいんですね
      特にエナメル線は良くも悪くもダンピングがないので、やるならぎちぎちに巻きつつ必要あらばダンピングする
      なので私もそういう機器にはBELDEN率が高いです。

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