高域を救いたい4 ケーブル編


その他と言ってもむしろ一番大きいかもしれません。

さて、何があるかというと

1.ケーブル

2.電源

3.振動系、セッティング

があります

わかりやすいのでケーブルから行きます

これはあらゆるアクセサリーで言える事ですが、『歪みが他に原因があるものをそのアクセサリーで何とかするのは基本的に下策』と言うことです。我輩も長くその罠に陥り迷妄を窮めました。聴きやすくはなるけど本質的なもの、位相とかがおかしくなるとか。わかりやすい所だとウルトラハイがバッサリ落ちるケーブルは一見聴きやすくなりますがろくな事にはなりません。

古典的な大手スタジオでウルトラハイがルームチューニングでバッサリ落ちがちなのもここらへんが一因ではないかと思います。他にも要因はありまして、低音をフラットにするために高域をもっと吸いすぎ死亡。更には機器が微妙な上にセッティングも微妙でウルトラハイバッサリで音数減らさないと可視化できない、とか。これらの複合要因でしょう。残響のf特が全てが完全にフラットだと、あらゆる部分が理に叶ってないと誤魔化しがないので高域がキツくなりがちです。

しかしケーブルで歪みなどを何とかするのは下策ですが、『悪い意味で歪みをつけてしまうケーブル』も多くこれは何とかせねばなりません。これは高額なモノでもダメなものはダメ。ではどのような条件が歪みが付くのでしょう?振動減衰の遅さや振動のQが大きいです。電気特性はほとんど歪みに影響しません。強いて言えば静電気は影響ありますかね。

ケーブルの見分け

まず一番ヤバイのは尖ったQです。これは是が非でも避けたい。ケーブルの音は触れば7割わかります。あとの2割は切断すればわかります。最後の1割は聴かねばわかりません。一番危険なタイプは硬くて針金的な奴です。細いカプトン被服や安いテフロン被服は大体ヤバイ。もちろん芯線の性質でもそうなります。硬質な薄い被服の単線がヤバイ。まあリンギングで輪郭をつけてハイスピードな気にさせるという奴ですね。撚り線の方がそこらへんのギャンブル性は少ないです。

単線は音が良い、と言われがちですが(事実我輩もより線は信号ケーブルでは全く使っておりません。電源も撚り線はBELDEN19364くらいですが)この考え方に与しません。というのも多くの場合は、特にスピーカーケーブルで(測定に出るレベルで)電気的に可聴帯域レベルでフラットではないことも多いのです。単線が太くなるほど、2mmとかなら確実に可聴帯域は測定上フラットではないです。細ければ問題有りませんが(高周波ケーブルとかもありますしね)、ケーブルは電流の量に伴い断面積が必要になりますので使用箇所次第で細くするわけにも行かない。

単線の弱点は加えて振動的にQが際立ちやすいからです。0.1mmとかならそれすらも消えますが。なので0.1mmエナメルワイヤーを限定的な箇所ですが猛烈に推してます。電気特性としては理想は単線の多芯、それも束ねず距離を離した多芯です。科学的なハイエンドケーブルや世界一のフラットさと音数を持つ例のグルマン式蜜蝋煮ケーブルはそういう構造です。

より線やリッツは実は特性が悪いんですね。リッツ線は高域を伸ばすと勘違いしてる半端なメーカーもありますが、ちょっとしか伸びません。近接効果ですね。そもリッツ線は高域を伸ばす為ではなくコイルにした時に単線より電流が片寄らず発熱しにくいから産まれた物です。広帯域と云う理由でリッツ線推してるメーカーやオーディオ技術者、古いです。音作りの一環としてなら全然アリと思いますが。

単線はほぼ全ての市販のケーブルがそうであるように多様な被覆なりを付ければQは減りますが、今度は振動の遅れによる付帯音がつきます。特にゴム質の素材は。更に重量が重くなるのも振動の遅れに繋がります。いかに軽く、しかしQを下げるかです。ケーブルデザインは難しいんですが、一般的で安全な作りにせねばならないメーカーはどうしても不利な所はあります。

最もケーブルも箇所によって求められるパラメーターが違うのでめちゃくちゃ簡単に書きますが、オススメケーブルとかまで書くと高域を救いたい六部作の予定がこち亀くらいの長さになるので要素だけ。

インターコネクト

わかりません!w

いや、わかるんだけど前にも書いた通り使用箇所の電流、電力によって全然変わるんですよ。一般的にはボリュームコントロールする物の後なら大抵は低電力ですからめちゃくちゃ細い…それこそイチオシの0.1mmエナメル線が神として君臨しうりますし、逆にボリュームコントロール前、例えばDACプリ間ならもう少し導体容量が必要です。

絶縁体としは理想的にはやはり自然素材が優秀、綿とかですかね。別に『人間には自然素材がー』とか『有機農法がー』とか見たいな事は我輩考えてませんよ、魔族ですし。読者ならわかると思いますが。

ただ人工的な素材は静電気からまず逃れられないのと構造が一辺倒なので振動に癖が起きやすいんですね。誘電率も低めでフッ素樹脂などにもそんなに劣りません。フッ素樹脂は振動にも癖があり(テフロン臭い、とか達人ならわかるはず)静電気も起きやすくトゲがあります。余程の高周波を流す部分でなければ選ぶ理由がありません。

スピーカーケーブル

これは多芯1択です。異論は認めない。故high fidelity cablesという超例外はありますがあれはもう交流理論の外に居る何かなので。

そもそも多芯かつ各々が離れてる構造じゃないと断面積と周波数特性を両立出来ないので議論の余地が無いんですね。ただ完成品だとそういう構造は大抵高いんですよ。SHUNYATAとかJORMAとかになっちゃう。さもなくばグルマン式蜜蝋煮ケーブルしかない。絶縁体は理想的にはやはり振動を殺せる締め付けのキツい綿糸ですね。あとLANケーブルも上手く使うと物凄いスピーカーケーブルになります。多芯で単線で軽量という見事な条件。弟子がこれで劇的にモニター環境を改善させてます。ただこれはまたの機会に。

電源ケーブル

これも性質的にはスピーカーケーブルと似てます。断面積がある程度あり(とは言え2スケあれば大抵はOK。基幹部分は3スケ強あるといい)やはり広帯域だと良いです。ただスピーカーケーブルと違って音声信号がモロ流れるわけではない。帯域の広さは音数と空気感に顕れます。完成品だと自然素材、例え麻とかが介在として中に入ってると振動、誘電率、静電気いずれを取っても良くなります。BELDEN19364が何故か音が良いのはそういうルールを守ってるからです。

デジタル

基本的には振動的に細い方が概ね有利です。そして導体も細ければ細いほど良いまである。太いと帯域も狭くなり重さも増え何も良いことがない。これはSPDIFでもAESでもUSBでも同じこと。極端な話、カタログスペックで導体容量みて太ければ『アカンな』と切っても良いくらいです。特にUSBは高周波なので絶縁体はフッ素樹脂、テフロンなどが望ましいですが、固いのは、だめ。柔らかいフッ素樹脂がいいです。実はレアです。

あと導体容量は太くなってしまいますが、構造的に極細ではない解として、編組中空構造というのがあります。これはとても帯域が広く、ひとつの解答です。オーディオ/エンジニア/インストゥルメント向けとしてはanalysis plusしか知らないけど。


“高域を救いたい4 ケーブル編” への7件のフィードバック

  1. いつも楽しく拝見させて頂いています。
    デジタルケーブルが細い程いいというのは自分も経験上なんとなく認識していたのですが、MonsterAudioさんの口から発信されていると絶大な安心感があります。

    今同軸ケーブルを新調しようと色々物色しているのですが、同軸ケーブルの長さに関して何かご意見がありましたらご教授願いたいです。

    余談ですが、先日某掲示板で百均ネオジム磁石を用いた音質改善策が紹介されており、拙宅のシステムでは絶大な効果が見られたため是非試して頂きたいです。

    • ご愛読いただきありがとうございます
      信号の周波数に因らず太いと余程特殊な構造で無い限りどうしても付帯音がつきます。付帯音前提で上手く音作りをしているハイエンドケーブルもありますが、それも部屋なりシステムなりがハイスピードだとその作為も鼻につきます。恐らくそちらのシステムは相対的にハイスピードなのではないのかな、と予想されます

      SPDIFは想像より長さにそこまで弱くはありません。かつ周波数が低いと短さにも強い。何故なら反射が起こりにくいからです。経験則では50cm~(それ以下は試したことがないというか物理的に厳しい)で問題はありませんでした。そして2m位までは大きな劣化は感じません。

      それ気になりますね…
      日本一のhigh fidelity cables所有者かつ磁力も実験で携わってきましたが、使い方はまだ無限の可能性があります。理想的にはネオジム磁石自体を導体としてしまう事ですが、外部から磁力を導体に与えても効かないとは思いません。(MC0.5はそれに近い)

  2. 市販のスピーカーケーブルではShunyata/Jormaなどの高額なシリーズ以外おすすめは出来ないでしょうか?

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