今回中川統雄氏の来訪で、とにかくトランジェントの話をしました。トランジェントは非常に大切な項目で、少なくとプロオーディオはこれがある程度優れていることが望ましいです。
再生におけるトランジェントと言っても要素は色々。大別すると…
1.立ち上がり
2.収束
両方欲しいのです。
1は細分化するとミクロの急峻な立ち上がりと、そもそもウーハーとかが他についてこれてない、のマクロな話です。後者は測定は簡単ですが前者は我輩が知る限りはまともな測定はありません。
前者は高調波の再現に必要です。高調波はとても大切。何しろサイン波と楽器の音の違いはここから来ますから。延いては質感を支配する項目です。
以下はバイオリンの波形ですが、倍音のみならず弓の擦過によるランダムノイズなどを併せて相当高い音が出ております。
以下を見ると高調波こそが音色の支配者であることがわかります。
なおトランジェントを最も要求する物の一つはチェンバロです。金属弦を金属の針で引っ掻く原理ですが立ち上がりがとにかく早い。ピッチカートな上に胴鳴りもほとんどないので収束も速いんですが。これが完全に再現できたら立ち上がりは合格です。
そして基本的にはツイーターが支配しますがこの点に於いてはユニットの硬度が物を言います。硬いもので空気を高速に揺らす必要があるからです。そうなると例えばダイヤモンド、金属系のツイーターとなる。ただ前にも書きましたがピストニックモーションの時点で完璧とは程遠いです。ピストニックモーションの楽器など此の世にありません。全ては波動モーションなのです。硬くて重い何かが空気をぶん殴って超圧縮させるのが楽器です。これは解決は簡単でスーパーツイーターCLT7を買いましょう。これ以上早く強靭な高調波を出すアイテムは現在存在しません。前後位置の合わせ方は生楽器を近接で沢山聴いていれば出来ますがちょっと大変かも?別に記事にします。
後者のマクロ的な問題に関してはマルチウェイの宿命です。特に大型になればなおさらです。ユニットの位置関係やネットワーク、はたまたアンプなど多くの要素があります。それの解決のために例えば幾つかのメーカーで色々な補正をしてますが、補正はDSPに於いては毒は避けられません。無論メリットが上回る事は全然あると思いますが。ATCあたりのモニターは内部でアナログでのオールパスフィルターで頑張ってます。まあ理想的にはスピーカー自体で物理的に何とかしたいですね。
複雑なネットワークで無理矢理なんとかしてるスピーカーメーカーもありますが、駆動が重くなりまた結構何かを失いがちです。自然の摂理からは離れた音になり演奏家、音楽家の類いはとりわけ嫌がります。そういうメーカーは昔のアメリカには沢山あったんですがほぼ全て消えました。その路線を圧倒的にブラッシュアップし突き詰めたのがYGです。後述する収束では市販の普通のスピーカーの類いでは最高です。ただこの重くこねくり回されたネットワークが『自然で楽しく音楽を聴く』からは遠いので絶対に終わらないオーディオの追及になる事必至。特に生楽器聴く人が選んでしまうとそうなる。古いYGは(anatとか)ゆるゆるでそこは問題が少ないですが。
YGのステップ応答。マルチウェイの限界ではなかろうか?
逆に測定値が恐ろしく悪い B&Wがそこら辺から一定の支持があるのは簡素なネットワークも一因でしょう。生き生きしているからです。でもダイヤモンド化以降のモデルは設計が変わりモニターにはあまり使うべきではない。位相が正しくないから。リスニング用には良いですがこれで仕事は無理です。ですのでB&W使ってる海外のクラシック専門スタジオ達も、予算がある大手でもいまだにN801とかそれどころかMatrixとか古代の物を使ってる事が圧倒的に多い。
特に古いB&WはBBCディップという手法を継承しており…とか長くなるのでやめておこう。
閑話休題
ではどういうスピーカーがマクロ的に有利なのでしょう?ユニット構成ならそらフルレンジです。次いでうまく出来た同軸。さもなくば近接したユニット配置。ムジークなんてそこは上手いんですよね。特性も実は物凄く良い。内外価格差がグロいけど。
無論クロスオーバーも大切です。これはステップ応答を見るしかない…シンプルな方が問題は圧倒的に起きにくいですが、無論高次クロスオーバーの素晴らしさもあり(むしろ好き)一概にどちらがいいとは言えません。時間軸を気にするならシンプルクロスオーバー。究極はネットワークレス。
ただ最適解はサブウーファーです。低音ユニットを最適な位置に置けて位相幾らでも可変出来るんですから。なおこれは後編の収束の下りで猛威を振るいます。
“トランジェントの要素1 立ち上がり編” への2件のフィードバック
立ち上がりたち下がりは、より正確さを求めて何十年🤣
出川式電源もそうだが直近ならアコリバのMDだな。
バッテリードライブのパワーアンプに入れると腰抜かします。😅
やはり磁力は電源ケーブルには大きく有効と思います
がバッテリードライブのパワーアンプに!?