速度と自然音に傾倒しはじめた頃、もはや並みのピストニックモーションでは我慢できなかった時があった
自然音、とは自然な音のある意味上位規格で「生活においてスプーンを皿にぶつけたとか海とか謎の鳥の声とかをそのまま再現する」という話である
とにかく速度が大切で、”昨今の”モニタースピーカーとかの部類では絶対出せないというか最も遠い。流行りのスピノラマという指標では全く触れていない分尚更遠い分野である。
そんな自然音再現を求める世界中の人間で最も支持を得ていた…いやいまだに支持を得ているのがQuad ESLシリーズであろう
YGだってMAGICOだってESLの音をピストニックモーションで出したいが一心でスピーカーを作っている、つまり彼らの憧れの中の憧れのスピーカーなのである(そしてYGはESLにある程度準ずる速度を持つに至る)
ちなみに真のモニターの王のひとつはESLである。ヨーロッパ、特にドイツでは(イギリスのスピーカーなのに)モニタースピーカーとして昔物凄く使われた。クラシックモニターとしてはほとんどこれのはず。自然音に近くそして極力細かい音が求められたわけである。
「でもYGとかスピーカー造らなくてもESL使ってればいいじゃないの」と思うでしょ?
めちゃくちゃ壊れるんですよ
恐ろしく壊れる
我輩も一年持たなかった
スタジオでも毎年入れ換えていたのである
比較的壊れずに済む方法としてはサブウーファーに低音を割り振れば振幅が減って壊れにくくなった、のだがESLが早すぎてなかなかマッチするサブウーファーがなかった。現代の対向型サブウーファーや、昔の軽量コーンの超速大型ウーファーでないと繋がらない
それを地で行ってたのがかのマーク=レヴィンソン氏である。会社を倒産させることとエロ本を執筆するだけの男ではないのだ。
ちなみに当時26000ドルという高額システムであった。今のYGのXV並みかそれ以上のイメージである。
現行のESLは膜を厚くして壊れにくくなった代わりに音は遅くなり癖がのり明らかに劣化している。
至高のスピーカーの一つだが壊れやすさとbipolarが故のセッティングの超難易度で手を出しにくいスピーカーの頂点の一つである