恐ろしくレアでインターネットに全く情報がない真空管を落札して届くのを待っている。4本で290000円。
サンセイエンタープライズという真空管の商社があった。伝説的カリスマアンプビルダーでありフランスのオーディオ誌の編集長になるジャン平賀が神戸でやっていたのだ。
サンセイエンタープライズは日本でブイブイ言わせており、当時手に入らなくなりつつあったWE300Bの代わりにイギリスのSTCに特注して造らせていたりした。そもSTCはwesternの兄弟会社であり、元々300Bと同じ規格の球を造っていたのでほぼほぼ本物といって差し支えない。
そしてそれとは別に1972年頃WE300Bのクローンを本気で造ろうとしていたらしい。WE、ITT、ベルシステムと交渉して製造したらしいが物凄く苦労したようだ。8回の試作でようやく満足行くものになったそうな。
そもコピー元は1940年代の300Bなのだが、もう1970年には精錬のレベルアップにより逆に同じフィラメントなどの材料が手に入らなかったという。そして当時の材料で普通にデッドコピーしても300Bの規格通りの性能にならない。なのでグリッドを金メッキにするなどで工夫していた。
グリッド金メッキと言えばcetronですな。ただ画像を見るとcetronともSTCともつかないものだ。
cetron300Bは世界最大の真空管ディーラーrichardson usaによって1980、90年代に造られた。WE300Bは1970年に一度製造を終えている。が、その後一度NASAの依頼で製造し、さらに年月を経て1988年に再生産したのが最後だ。
1995年の復刻もcetronも『同じオリジナル機材』を使っている、というがもう別物だ。2000年代の復刻に至っては中国製の噂すらある。(実際そんな音)
そして今回のサンセイエンタープライズの物はcetronとSTCの合の子のような謎の物体だ。
プレートは炭化処理してあるマットなグレーでSTCの物にかなり似ている。そして金メッキのグリッドはcetronだ。
そして一番近いのはハインツ&カウフマンというアメリカのメーカーのものだ。というかこれと同じの可能性が高い。
ハインツ&カウフマンは、特に高電圧や高周波数で動作する真空管、特にクライストロンに関連して知られている会社です。クライストロンは、レーダーや電子機器、放送設備など、多くの高周波数アプリケーションで使用される電子管の一種です。
この会社は、1930年代にアメリカの物理学者シグマンド・ハインツとルイス・カウフマンによって設立された。彼らはクライストロン管の開発において先駆者であり、この技術は第二次世界大戦中のレーダーシステムの進化に大きく寄与したそうだ。RCAやAT&Tの敵である。
そんなかなり立派な会社でアメリカの真空管黄金期のメーカーがガチって造ったこれが悪かろうはずはない…多分。
なお『試聴を繰り返しWesternの物と同じ音になったと保証します』とかデカイ事が書いてある。そんなことはあり得ない。まあ岡谷とか本物を越えていると言うし、本家とはまた違った素晴らしい管かも知れない。ハインツ&カウフマン300Bの音の評判はすこぶる高い。
まあWEと同等のレベルの音が4本でこの音なら…安い。本物は2本でもこの値段では買えない。
さて、現在の珍品JIMTEC300B…めちゃめちゃ音が良いのだが…と匹敵してくれればハッピーです。