E130Lのファインメットコアトランス使用のプッシュプルアンプを暫く使っていた。素晴らしいアンプで、恐ろしく精緻でニュートラル。かつ非常に広がりや奥行きが強烈でこの点では他には比類がない。ダブルプッシュプルという究極の特性を持つ理想の回路と理想のトランスが噛み合っている。
これを買う前にはcaryの845/211コンパチブルなモノラルアンプを使っていた。凄まじい物量で一台40kgである。かつ限定でパーツが良い。しかし衝撃が走る。頓死してしまうのだ。
そんなわけでサウンドパーツに代えたのだが(本当は同時に山本音響工藝の素晴らしい45シングルなどいくつか同時並行だったが)、ゲルでフローティングすれば全くけちの付け所がない音だった。最近も音楽関係者が全く文句がつけられなく仰天していた。奥行きがとにかく凄い。
ただ、先日も書いたがcaryのモノラルシングルアンプに勝てない部分があった。完全なる透徹な音である。ブレのない自然現象となんら変わらない理想的な音。これはトランジスターアンプでは絶対に不可能な領域である。直熱三極管シングルでないと摂れない栄養がそこにある。それとオーケストラの低音の瞬間的な立ち上がり、パワーもcaryに及ばない。普通はプッシュプルの方が強そうなもんですが。
で、今回のアンプはcaryにかなり近い音だと思う。球の構成は初段、増幅段以外は同じだからか。211同士で比べるなら新しいほうが明らかに良い。精緻で透明感がある。caryで845使用との比較では、845のほうが立ち上がりのパワーは強烈。ただ透明感では新しい方。ただ甲乙つけがたい。
正直聴く楽曲でサウンドパーツと211シングルの優劣は変わり得る。
ジャズもクラシックも211シングルが良い。自然現象となんら変わらない音だから。逆にポップスとか電子音楽はサウンドパーツの方が優れた部分もある。意外だが。
もう少し他のアンプのレビューもしよう。
山本音響工藝の45シングル。これは音の造りや質は全く素晴らしい。スピーカーを選べば神の音である。やはり木材の使いようとトランスの質が抜群。コア自体はサウンドパーツのシングル向けトランスと同じレペルのスペック。
ただあまりにも駆動力が足りない。これは同社の300Bも同じで、例えばairtightと比べると質は山本のほうが高い(パーツが高いしね)のだが駆動力は明確に劣る。トランスのサイズがネックと予想。
OCTAVEのアンプ。KT120を使ったステレオパワー…型番は失念したが、持っていた。駆動力は高い。この点ではサウンドパーツE130Lを凌駕する。ただ奥行きと精緻さではサウンドパーツの圧勝。まあコア材がまるでレベルが違うので仕方ない。しかし駆動力とともに普通の現代的スピーカーではvoxativeほど瑕疵を顕微鏡で覗くような音ではないので差はかなり減りそう。駆動力の分、OCTAVEは有利だろう。 もし普通のスピーカーを使うならOCTAVEはまた使ってみたい。
EAR 861
これは物凄く昔なので比較は難しいがEARのアンプでは飛び抜けて良かった。クリアーで精緻。v12とかv20とかより余程良い。あまり沢山パラレルにしても濁るんですよね。ただ駆動力は並み。トランスも大きくはないから仕方ない。能率が高いスピーカーでないと鳴らないと思う。それこそJBLとか。
他にも色々使ってきたが書ききれないので今回は此処まで。
airtightの211を聴いた限りだと特段に高能率のスピーカーで無くとも…それこそディナとかでも充分に破壊的なパワーは発揮できていた。プリアンプはconvergent audio technologyの名機SL-1。最もまさに竹を割ったような特徴的な音で好きか嫌いかで言ったら自然では全く無く好きではなかった(放言失礼)
最もYGとかで845/211シングルで鳴るかは自信がない。せめてパラレルが必要か?オーディオノートにちょうどありますな、お値段は破壊的ですが。ちなみに欧米ではYGには結構真空管アンプを使う、と伝聞している。多分KT150プッシュプル、あるいはパラレルプッシュプルなら鳴るだろうが。ただ真空管アンプは出力トランスのみならずとにかく電源トランスの物量が大切。やはり電源の抵抗が大きいと駆動力は露骨に下がるのだ。どんな管を使おうが電源で制限されては駆動力など上がりようがないのは自明…大型のトランスで願わくば複数は欲しい。なのだがこれに言及してる真空管アンプ界の人は私は寡聞にして存じ上げない。
PCオーディオ(バッテリー駆動)という過去存在しなかった超越的な音数になるとアンプに求められる内容も変わってくる。そして高額で特性の凄まじいトランジスターアンプより真空管の方が実は音数が多いと改めて痛感している。真空管アンプ、良いですよ。物によりますが。
“サウンドパーツとの差” への6件のフィードバック
師がディーゼル機関車のような真空管アンプに浮気している間にサウンドパーツE130Lを注文してしまいました。バランス接続推奨とのことでアッテネーターもさみず音響に特注してしまいました。これらが到着する前にDACが爆死して音出しできない状況が続いております。人の真似ばかりしている人間に対して神は罰を与えたようです。
サウンドパーツE130Lは完成度は最高です。ニュートラルで歪みが少ない、奥行きの深さではカンストしてますので私も絶対に手放しません。また帰ってきそうな予感もひしひしとしてます。ただ、完全過ぎて浮気をしたくなりました。
さみずのアッテネーターは音が良さそうですね。ライントランスがホントに良かった。正直、欲しいです。
なんとDACが!南無阿弥陀仏…
密閉型スピーカーの導入を検討しています。
サウンドパーツのE130Lの駆動力がそこまで高くないという内容は以前の記事でも書かれていましたが、YGのCarmal2やMagicoのS1Mk2など比較的小さめな密閉型なら鳴らせると思いますか?
それとも記事にもあるようにOCTAVE等を使ってみた方が良いでしょうか?
magico s1mk2は各所で聴いた経験と、またユニットに比して内容積が大きい所、またネットワークがYGより軽い(といっても-18dB/octですが、インピーダンス補正など含めてめちゃくちゃ素子が多いわけではない)から鳴らせるとは思います。が、球をkt150とかにしたほうが良いかも知れません。
YGは基本的にネットワークが重く内容積的にも駆動が重いです。OCTAVE一択と考えます。
貴重なコメントありがとうございます。
一度三極管を使ってみたかったのですが駆動力との両立というのは本当に難しいんですね…
まずはスピーカーを決める所からですが、KT150を使用したアンプにするか諦めて半導体にするか良く考えたいと思います。
YGにするなら逆に真空管を激しく薦めます。その位相特性の良さが非常に真空管アンプにて生かされること、それ以上に無機質になりがちなYGを有機的に鳴らせるとアメリカあたりでは真空管の大出力アンプを使われるケースがかなり多いようです。
magicoは元々どちらかといえば真空管的な音ですからね…トランジスターでもOKです。