真空管は我輩より遥かな先達が居るのでなかなか大きな事は書きにくい。でも書いちゃう。
我輩、秋葉原に行ってきました。真空管を脚で探すのです。そこには通販やオークションやebayでは得られない栄養があるのだ。そしてとある店の店主のじいさんと話が盛り上がりました。やっぱりじいさんは良いですね、勉強になります。不遜ですがもうオーディオの多くの分野で学ぶ事が少なくなり、頭を垂れて教わる相手も極めて少なくなってきました。ただ真空管は奥が深い。かつ真空管の全盛期を過ごした今の極まったお年寄りには死ぬまで勝てません。だって今では考えられない貴重な真空管を湯水のように使えたわけですから。
で、盛り上がった結果、値引きでKR211をとてつもない安価で買えました。7割引位ですよ。え、良いんですか?経営大丈夫?
KRはチェコのメーカーでTESLAの技術と設備を活かして真空管を新たなテクノロジーで作るハイエンド真空管メーカーです。ただ材料が手に入らず、製造は止まってます。
特徴としては『恐ろしく頑強な造り』ですかね。内部も頑強ですがガラスも恐ろしく厚く重いです。前に2A3は買いましたね。ただバルーン管の245にハマって、あまりに凄すぎてろくすっぽ使わずにドナドナしました。
さて音ですが、はじめは後悔しました。高域の付帯音が気になる。ただ4時間ほど通電するとそれは霧散しました。素晴らしい音です。色彩感が高く、非常にしっかりした音でありSNも明らかに高く、高域もシルキーです。中国の安い球(electron)とかは比べると音が薄く、また雑味があり、音にブレがあります。GEも比べると腰高ですね。そこらのヴィンテージより遥かに良いです。こうなるとKR300Bも気になります。
今度御礼にwe300B(84)でも買ってあげようかしら。なお値段。今回落札したアンプより高い。でも80年代の球は音、良いんですよね…
なお2000年以降の復刻版は中国製ではないか、と店主談。嘘か真かわかりませんが。でも確かに音的にはわからんでもない。2021年版はどうなんでしょうか?
以下蛇足
最近言えるのは『凄く駆動しにくいスピーカーを除けばどんなアンプも211/845のシングルに勝るものはないのではないか』という事ですな。
元々透明感や情報量、生き生きとした駆動力は真空管が有利です。私がやったわけではないのですが、宍戸式のWAVACの方が『トランジスターはスピーカーから出力された音を測定すると低音が遅れる。出力トランスがあるとそうはならない。ギターアンプなどが真空管なのはそのタイミングのズレが気になるから』と言う。本当かは全くわからないが。ただ駆動力の絶対値では石にはかなわないし、いわんやデジタルアンプには勝てない。せやからサブウーファーか低音だけアンプ内臓されたスピーカーを鳴らして本体は真空管が良いと私は思うのです。
そしてどうしても透明感や透徹な空気感では良くできた三極管シングルとプッシュプルの間では越えられない溝がある。それが如何なるレベルのプッシュプルでも最後はここに差があるんですよね。スピーカーが高能率だったり特にシングルコーンだったりすると元々分割されてないがゆえにそれが際立ちます。逆に言えばマルチウェイならばプッシュプルで問題は少ないでしょう。OCTAVEなんて現代的スピーカーには適正が高いです。
無論シングルとプッシュプルには駆動力に差があります。なのでシングルで通すなら大抵のスピーカーでは大型の真空管でないと充分には鳴りません。
ただ、211では言うほど14W程度とあまり出力が取れないことと(A2動作まで分回して高出力にするのはちょっといただけないかな、と。竹を割ったような音になりがち)トランスに膨大は物量がないと良い結果がでないのでコスト的にはかなり高くつきます。がトランジスターの昨今のハイパワーアンプを考えるとそんな高くもない気がしてきてます。
理想的にはサウンドパーツで特注でテクトロンに凄い電源トランスと出力トランスを作ってもらいワンオフがベストかも知れません…水谷さん、やってくださるだろうか?
他の直熱三極管だと、45や2A3は音は良いけど駆動力が少なすぎてaltecあたりぐらいしか鳴りません。通常のスピーカーは元よりvoxativeでもマグネットが強すぎて駆動力がまるで足りません。300Bもシングルでは駆動力的に厳しいですね。高電圧で無理矢理使うならわかりませんが。50とかPX25とか他にもドイツ管で名球はありますが駆動力的には厳しいですね。そうなると必然的に211か845となる。無論DA60やGM70などもっとデカイやつでもよろしいのではないでしょうか?
以前cary 805 anniversaryという貴重なアンプを使ってましたが、非常に勉強になるアンプでした。スイッチで多分カソード抵抗を切り替える仕組みなのか?211と845をコンパチブル出来ます。さらにNFBも無段階で増減可能。
そしてわかったことはNFBをかけると途端に奥行きや立体感が消え、音質的にも良いことはありませんでした。これも普通のスピーカーならまた話は違ったかも知れませんが。やっぱ直熱三極管シングルアンプでNFBは一般的スピーカーには。(なおcaryのこれはどこからどこにNFBをかけてるかはわかりません。トランスの2次側だと補正とか必要になりそうなので局部帰還ではかいでしょうか?多分?)
そのときは圧倒的に845が良かった(特にpsvane 845acmeは凄まじい音だった。)のですが、今回は211を見直しました。実に麗しいです。透明感と流麗さでは211が限界点が高そうです。ただ破壊的な程の駆動力、立ち上がり、オーケストラのパワーは845が有利。共に名球だと思います。
そして願わくば300Bドライブが良いですね。論理的には説明出来ませんし、n数も少ない『あなたの感想ですよね』レベルの話ですが今のところかなり陽性的中率/特異度ともに高いのではないかなと思います。無論そうでないアンプも素晴らしい物はあるでしょう。しかし同じコストならば非常に有利であろうなとは思います。理屈を無理矢理考えるなら高いドライブ力が求められるので、低インピーダンスで強力な球が当然ですが有利ということでしょうか?
皆さんも送信管を使ってみてほしい…