fc = c / 4dfwall
これは魔界の呪詛の言葉です。
dが壁とスピーカーとの距離、Cが音速、fcがキャンセルされる周波数ですな。
読者諸兄が居る人間界の常識的な住居の音速が340m/secとして例えば壁との距離が1mならば340÷4で85Hzとなる。
そしてキャンセルの何が不味いかというと、EQかけてもどうしようもないことにあるのだ。山は削れるが谷はなかなか上がらず、上げても害しかない。そもそもEQかけることはあまり推奨してないですが。
そしてこのキャンセルはあらゆる壁面と起きているのですが取り敢えず後壁だけ考えましょう。
回避or軽減する方法は幾つか有ります。
一つはめちゃくちゃ近づける。極端な話、距離が25cmならばキャンセルは340Hzです。すると指向性的には後ろに回りにくくなりキャンセルされづらい。かつこの周波数なら殺しかたはいくらでもある。(結局の所、吸ってしまえばキャンセルも起きなくなる。)
欠点は『初期反射が早く強いので音場的に死にやすい』こととなにより低音がブーストされしかもそのブーストされた低音はあまり品質がよろしくない(収束が遅い)。周波数しか見ない人が多いがこれは大切な事です。
二つ目 めちゃくちゃ離す
例えば20Hz辺りならキャンセルされてもそんなに問題は無かろう。さてその為の距離は…なんと4m!!!
割と無理ゲーである。上手く置けてもニアフィールドになる。そして大抵の3way以上はニアフィールドではタイムアラインメントが合わず死亡。幸運にも全壁面から余裕で4m以上離して置けるのなら是非。
三つ目 部屋の秘孔を探して突く
各壁間でキャンセルされる周波数を見事に散らせばそれなりに影響は減るのです。要は『耳と測定で良い感じの所を探す』ということ。シミュレーションでも出来るでしょうが複雑な形なら無理です。奇数分割法など様々な論理が生まれて来たがそれらはこれに属しますな。極めて現実的であり、かつ強力でありこれは少なくともやるべき。昔B&W 800D2をお使いのお宅であまりに音が腰高なので測定したら50Hz以下は絶壁…無だったことがある。要はキャンセレーシャン周波数が集中したわけです。天井もべらぼうに高く部屋もべらぼうの広さでしたがセッティングがしくじればこうなります。
四つ目は 『殺せる周波数の距離に置く』
例えば比較的安価で設置も楽なYAMAHAのパネルは80Hzまで有効だが、80Hz以上となるとおよそ後壁との距離は1.1m以上取れば良い。お、現実的ですな。4mよりは遥かに。
五つ目 サブウーファー
我輩は超サブウーファー推しの原理主義過激派極右活動家だが設置場所による定在波という超高価なスピーカーでも覆せない物理的問題を安価で解決してくれるのだ。必要なのは調整する技量だけ。それが簡単じゃないんですがね。本当はインストーラーがやるべきなのだがそんな奴はこの国のオーディオショップに居ない。
さて、サブウーファーは超低音しか出さないので限られた周波数帯域のみキャンセルに気を配ればよい。その上にデュアルサブウーファーならば山と谷を馴らす事に依り収束速度も早い(なお部屋の残響のf特には思いっきり影響を受けるのでサブウーファーで超低音まできっちり出すと残響時間のコントロールとしてAVAAが必要な事は多いがそれはどの大型スピーカーでも同じことでありますな)
サブウーファーで超低音…例えば20~40Hz強まで出してしまうなら、本体のスピーカーの設置位置がいわばサブウーファー帯域にキャンセルが起こしても構わないという事になる。
YG acousticsは思いっきりこの思想を使った帯域分割であり、しかも超高価なラインはまさにサブウーファーを良い感じの所に別離して配置するわけです。なお値段。
ついでにGENELECも斯様な考えであり2.2m以上離せなければ可能な限り壁に近づけろ、という。2.2mならば40Hzまで谷は出来ず、そこら辺はサブウーファー使用前提である。そして近づけて壁に近づける路線の場合、低音が盛り上がったら周波数を補正する腹積もりなのである。まあそれで何とかならないわけですがね。音場は死にます。
六つ目 壁に埋め込む
ラージモニターで昔流行ったやり方である。1930年代からあるのだ。スピーカー研究を圧倒的に前進させたナチスの遺産とも言える。
『超低音まで伸ばす』というのはナチスの研究で相当大事にされたのだ。何故なら『超低音は人を高揚させる』という音響心理学を当時彼等が確立させたからだ。党大会ではウーハーを山程床に埋め込んだりしてワーグナーを流して士官の士気を高揚させたそうだ。スピーカーシステムとしての完成品としては流石に1940年代の物より現代の物は優れているが(1940年代にはさすがに負けない…がこいつら励磁なんだよなあ。)真空管アンプ回路は現代のほぼ全てのメーカー製品より遥かに良く出来ている。全段差動回路も此処等の時代には既に有った。
我輩には懐古趣味も現代ハイエンド礼讃主義もない『イデオロギーゼロ』の人間だがコストや技術の継承などの理由で退化or断絶した部分もあるのだと思う。
これは無指向性スピーカー。『リボン型スピーカーを巨大ホーンで拡大して流す』等は1920年代に出来てはいたが近距離ではうるさいので沢山の無指向性スピーカーを置いたり、上下に設置した同一スピーカーの位相を反対にして低音を打ち消してf特をコントロールするなどかなり試行錯誤をしている。1932年とかで。
PAの最大の先駆者はNaziだがその後はアメリカが強い。1950年代にはラインアレイ(コラム型)スピーカーが誕生している。斯様に旧い技術なのだ。
一体何の記事書いてるのだかわからなくなってきたなコレ…ああ、埋め込み型の話でした。
さて、埋め込み型だがウーハーだけならともかく全帯域を出すスピーカーでやると音場的には宜しくないのです。実際埋め込み型ラージモニターで音場を見ることは不可能なのでは無いでしょうか?
ラインアレイといい埋め込みといい何かを飛道具的に良くしようとすると大体音場は死ぬ。
極力金を使わせたくないスタンスの我輩の思うまとめ
出来る限り安価に素晴らしい音を出すためのステップアップ。普通の住環境では最低でも部屋のツボを押さえてスピーカー配置する。只だね。その後サブウーファーかAVAAかはスピーカーと部屋のバランスで先にどちらかを選択する。小型なら無論サブウーファーが先に立ちますな。
“スピーカーと壁との距離の話(キャンセル編)” への2件のフィードバック
六つ目 壁に埋め込む
→コレは、カーオーディオはコレに該当しますね。
基本的な発想は無限大バッフルでサブはエンクロージャーになりますね。
1番の問題はフロントミッドバスの制動なんですがカーオーディオはバランス駆動が無い為難しい。
唯一、ALPINEF1だけなんですが一般販売してないのでもどかしいですね。🥴
alpineのユニットは良いですよね
フルレンジは本当に好きでした。
カーオーディオは高級車でも出来合いが音が悪いので取り組みがいがあります。条件が難しいから面白いです。
メルセデスのブルメスターも全然音が良くない