超スタジオ設計


360RAのスタジオを設計するクライアント三浦康嗣氏と当方(魔界)にて打ち合わせ。

次のブロックはまとまりのない理屈くさい音響の話なのでその次のブロックまで飛ばして良いです。イマーシブでの超マルチチャンネル音響の話ですが、ステレオにも有用な話なので部屋に興味があらばご覧ください。


今回はスタジオ、コンサートホール、リスニングルーム…三界を良いとこ取りした技術と世界から取り寄せた超高特性の部材達を使い倒して設計します。今まで手掛けた部屋でも最も自由なので素晴らしい案件です。なお今回使用する部材達は日本で見たことはありません。魔界以上の部材です。(吸音のQの中心周波数が30Hzや50Hz、70Hzの物を適宜織り混ぜます)。ありがちな空気層有孔パネルや石井式などではなくそれ以上の特性の部材で部屋の大掛かりな改修無しで殺します

なお正面左右のの角が落とされた多角形(多くの面がリスニングポジションに向いている)はステレオにはかなり豊かになります。下図にある大阪フェスティバルホールのような形状です。なおサーロジックやクリプトン、正面壁中央上部コーナーへのANKH5などで可能です。ホール設計でいう親密度に大きく関わります。適度な拡散と吸音によりハース効果などの影響を与えません。

なお稀に壁を逆にΣのように造り初期反射を届かなくさせる設計が昔からありますが音が壊滅的で滅びつつあります。石井先生の書籍にも書かれてましたが。スタジオ設計が玉石混淆(石多め)な状況にあるのはホール音響の論理、つまりヒトの官能の研究を学ばぬからと思います。

大切な事は常々言いますが残響のf特のバランスであり、これはスピーカーの高域のエネルギー(指向性とか)に影響を受けるので『この部屋はどんなスピーカー置いても最高』なんてありえません。スピーカーによって部屋をチューンし直さねばならないのですな。いわんや今回は超マルチチャンネル。それに合った残響のf特と初期反射の徹底的低減を用意します。具体的には全体の残響のf特を大幅に引き下げつつ、中音域(300Hz以上)の初期反射を均等に拡散と吸音を両方果たす事が望ましいでしょう。拡散だけですと3D拡散でないと近接効果を殺せる程にはなりませんが天井以外の設置では位相がモジュレーションを起こします。ですので拡散と同時に極めて平坦にBroadな吸音が必要です。

いずれも施工前の計算で出来ることはたかが知れています。低音に関しては低音のモードの予想位であり、どの位吸うべきかは全く計算出来ません。f特と残響の掛け算が官能で感ずる合計であり複雑怪奇、かつ四角四面でない部屋でおまけに壁の膜振動の周波数減衰などを読めない以上は部屋が完成した後で詰めねばなりません。

中高音についても現在のシミュレーションは現実を即しません。パラメーターに限界がありミクロな振る舞いや官能との関連性がまだまだ追い付かないのです。

特に中高域に関しては三界で最もシビアに知見が貯められているのはリスニングルームの音響です。我輩を筆頭にキチゲェども先人達がとてつもない試行をしてきました。石膏、壁紙、漆喰、コンクリート、各種木材、椅子の形状、仕上げやカーテンなどでシルク、綿、ポリエステル、ポリエチレンの差が如実に出てきます。しかしシミュレーションでは描写出来ないのです。コンサートホールでは建てたあとここら辺を頑張って詰めます。特にワインヤード型は建てる段階ではギャンブルなのです。逆にシューボックスはシミュレーションはある程度実地と近くなります。これはまた今度書きましょう。しかしこの大阪フェスティバルホールはとても音が良さそう。明瞭度と親密度が高そうです。でも残響がめちゃ長いので録音に向いてるかは不明。

これらもマクロな明瞭度とかしかわかりませんし、複雑な拡散を行うと途端に話が変わります。ミクロの質はわかりません。

要は結局は耳で調整せねばならないので職人芸になります。まあ魔界よりは遥かに簡単な条件なので比較的イージーな案件です。今回の案件では球形に精密に配置する13個のスピーカーのほうがキツイ。特に天井。設置用の特別な機材を日本音響と相談中です。


まとまりのない話でしたね、申し訳な。

そんな打ち合わせと同時に音を聴いていただきました。僅か一月で劇的に音が良くなっているからです。そして大変な好評でした。何故か?スタジオ巡りの成果です。と言っても弄ったのはサブウーファーの位相を10度ほど進ませたのと、カットオフを2Hz上げただけ。これで脅威のトランジェントをより際立たせながら実に自然で柔らかなアタックが得られました。かつ音場がさらに広く深くなります。

素晴らしいスタジオ巡りで部分的に『此処は強い』と思う要素を取り込み消化吸収してなお成長しました。その結果、非常に微妙なサブウーファーのエネルギーのタイミングの僅かなズレが気になる様になったわけです。やはり低音の躾は平均的にスタジオ(強い所限定かも)は優秀です。

一面でも及ばぬ所を取り込み消化吸収しつづければこそ無限に強くなります。是非とも相互通行して行きましょう。


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