フローティング論3ハイエンドメーカー編


magico編

従来はこの手の振動解析はいわゆる有限要素法という物で行ってきました。まあ3Dモデリングに色々な『要素』(材質、強度、厚みなどなど)を設定し『予想』します。が、複雑で大きくなると信頼度が低くなります。そこで『直接計ればいいじゃん』というのがこういうレーザードップラー測定機です。

もちろん両者を組み合わせるとかもありますが、オーディオ機器製作にはとても有効と思われます。で、Magicoが自社のスピーカーをそれで解析して造られたインシュがこれ

青いのあるでしょ?ゲルだよ。『これで実質フローティングしている』との言。ゲルの眷属である。さて、スピーカーは(普通は)踏ん張りが必要です。ウーハーが動く際、ある程度踏ん張りが無いと暖簾に腕押しです。しかし、通常のインシュでは(スパイクとか)あまり意味がない。なので固有振動や反射を持たず、かつフローティング(インシュレーション)をすることでエンクロージャに余計な力が加わらないように出来た、と

左がこのインシュ、右が市販で定評のある?インシュとのこと。ナンだろう、海外で定評って。FINITE ELEMENTE?『有限要素』だけに。

無論踏ん張りが要らないアンプなどとスピーカーとでは違うでしょうからこのインシュをスピーカー以外に使うのはダメそう。でも素晴らしい試みです。これが『インシュレーターを作る』ということなんですよ。木材で響きのf特を、という路線なら別ですが。


次、ソナス。

スピーカーの値段が上がるごとにゲルが増えます。そしてゲルの最低限がAmati G5 (600万。)でそれ未満はゲルの恩恵に浴する資格はないということなのでしょうか?

まあガチった設計はAIDA2ですね

>キャビネット全体は、“the Sonus faber”以来ソナス・ファベールが改良を重ねてきた“ZVT”(Zero Vibration Transmission)によって床面振動からアイソレート。アルミニウム製ベースプレート上部に、15mmサブベースプレートとエラストマー樹脂材を弓型に成型した“ボウ・スプリング・サスペンション”をマウント、スプリアス共振やアコースティック・フィードバックなどリスニングルームのあらゆる振動要素をシャットアウトするこの特許技術は、アイーダIIにおいてますます完成度を増しています。

要は金属のバネ性とゲルの減衰力をあわせ持った構造ですな。


YGはラックにてこれまでの概念をやってます。が、アルミハニカム様ボードと荷重によって可変する防振ゴム組み合わせは除振台で日本の企業がパテントを取ったやり方とほぼ同一で実は特に目新しくはなかったりする。産業の世界は強いのだぞ?とはいえ音響的に詰めたのは間違いなく、また良くできたラックなのは確か。しかしフローティングの上の板は癖を非常に出しやすく、さらにインシュでフローティングする必要があるのである。


眷属全てを解説すると死ぬのでこんなところでやめておきやしょう。まあインシュ…というかオーディオの振動の世界も進化してます。日本のアクセサリーメーカーはいまだに化石のような事をやっています。日本のオーディオの未来の縮図の様で悲しい。

『アクセサリーの魔人』なのだからアクセサリー褒めて盛り上げたいのですが…今回のメーカーの話で私が一番感動したのはソナスでした。3代も設計者は代替わりしましたが、その度に新たな科学技術を取り入れ大幅に進化してきました。美しい意匠はそのまま?に過去に捕らわれず古い葡萄酒を棄て新しい酒を新しい革袋に入れていく。いわんやアクセサリーごとき拠るべき伝統も糞もないものです。『石英』だの『カーボン』だの『ベアリング』だの過去のアイデンティティーなど棄てて未来へ踏み出して欲しいものです。アンプやスピーカーより遥かにケーブルやインシュは『理屈が通じる』のですから。


“フローティング論3ハイエンドメーカー編” への10件のフィードバック

  1. 魔神様
    いつも参考にさせて頂いております。
    isoacousticsのGaiaはゲルの眷属なのでしょうか?
    思想的にはゲル方面のように思えるのですが、サイトを見てもなかなか詳しいところ把握出来ず。
    またどこかの記事で触れて頂けると嬉しいです。

    • いつも読んでいただきありがとうございます
      サイトを読んだらほとんど今回の私の言っている論旨がそのままで驚きました
      レーザードップラー振動計で測定しつつ、反射や減衰力に関しての話を捩じ込まれてます
      高いものではないのに、日本のアクセサリーメーカーのガラパゴスを感じました
      そして金属スパイクを叩き台にしているという…
      スピーカー用途なので荷重に対する(つまりはf0に対する)考えは緩めのようですが、そして詳細な構造は不明ですが(どうも二重の素材と物性のアイソレーションなのでwilsonに近そうな感じです)明らかにゲルの眷属ですね

      • 返信ありがとうございます。
        試してみる価値はありそうですね。
        そして変に高い価格ではないのが、本当に有り難いです。

  2. 質問させてください。
    Martenなど最近のスピーカーはゲル足に行く前に
    ┏(^ω^)┓ こんな感じの足が生えていますが、
    あれはゲル足とセットで必要なものでしょうか?

    • ┏(^ω^)┓

      可能なら論理的にはあった方が良いのです
      というのも背が高いスピーカーはモーメントが生まれ揺れます。フローティングならなおのことですが、その揺れの角度が減るので特に一番上に有る、しかも波長の短い高音を出すツイーターに

      • おいては揺れが大きな影響力がありますのでなおさらです。
        ソナスファベールの高いやつもゲルが仕込まれてるものは
        ┏(^ω^)┓
        ですね

  3. 非常にわかりやすいご説明ありがとうございます。
    ウチのYG初代機にも足の加工とISO acoustics GAIA を、と思ったものの、安易でしょうか?main module w/standなのでGAIAの一番大きいmax 220lbs のものであれば仕様上は大丈夫そうですが、
    YGは最新機種でも┏(^ω^)┓はやっておらず、ゲル足も使っていなさそうです。自社製のラックにはゲルを使っているにもかかわらずスピーカーには使わないということは、YGのスピーカー設計思想にゲルは合わないのでしょうか?

    • YG初代は実は大好きです
      これは遣り甲斐のある素晴らしいお題ですね
      少なくとも筐体の考え方は今も初代も大差ないはずなのでそこから考えると、ズバリ『音がどうなったら幸せか』です。
      例えばよりクリアにスッキリと広がりがあり、歪みもなくパースペクティブを…となると今回の記事でmagicoがやったような、あるいはソナスのような軟性路線になります
      スパイクによる輪郭は無くなるので可視的な超低音ではなくなりますのである種のオーディオ的では無くなってきます
      新しいYGが好きなオーナーにはそれがどう取られるかわかりません。
      そしてコレ┏(^ω^)┓ですが、YGの下半身は広がっているので生やさなくてもいいと思われますので取り敢えず買ってポン置きして試すのはありかな、と

      • ありがとうございます。新しいYGのお話から、自分なりにピンとくるものがあったので早速ポチって来ました。
        >YG初代は実は大好きです
        それは嬉しいです。私の12畳程度の狭い部屋だとこのSP、激ムズです(笑)。が、Martenの良いやつとか成層圏の遥か彼方のものは別にして、普通のオーディオの枠内であればYG初代機は得難い魅力があると個人的に思っています。
        ゲル足は好みもあると理解しましたので結果はわかりませんが、理屈が分かっていればアクセサリーが単なるチューニングではなく、現代技術で真の性能Upが図れるというのは素晴らしいことだと思います。今後も更新楽しみにしております。

        • 初代YGはより『肩の力が抜けた路線』と思います。オーディオを意識させない音楽的な意味で本当に驚いた経験があります
          応援ありがとうございます

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です