ぶつ切りにするとわかりにくくなると判断して一気通貫(2翻)で行きます。
サブセッティング界の五輪の書を目指して…
前回まではいわゆる『多くのユーザーがサブウーファーセッティングについて抱える問題』に関しての話でした。つまりはそれを解決すれば良いわけです。
1.位置
これが一番大切です。ここでコケたら始まりません。そして大抵此処でコケているのです。
A.谷を殺す
まず最低限は『谷が無いこと』。これはそのサブウーファーがどれ程の機能を持ち合わせていようがどうしようもありません。山は良いんですよ。谷はマズイ。只でさえ今回は長大なのにこれを語ると長いので差っ引きますが。これはメインスピーカーのセッティングにも通じます。
そして谷が無い位置とは基本的には壁沿いと思って間違いはありません。harman社の推奨の一つに『角』がありますがお勧めしません。(念のため書きますが角に2台でも良くない。)
角に置くと不要なブースト(18dB)により只でさえルームゲインが有るなかで過剰になること、更にその現象で起きるブーストは『低音の収束が遅くなる』のですね。なのでやってみたら『非常に質の悪い低音』になります。測定値を超えて厭な音です。これは世界中のサブウーファーユーザーも指摘してますね。harman社の研究は結構穴がある。
さて、谷の有る無しの判断及び此処からの調整ですが、この時点でマイク用意して測定を始めるのはダメ。NORDOSTなどを使ったスイープと任意の周波数を使ったサイン波を『耳』で聞き取ってください。100倍早いです。
だスイープで凹みの有る無しを確認し、凹んだ周波数を特定して流しながらサブを壁沿いに動かします。それが盛り上がったら良し。念のためスイープで確認して…という流れです。その際の確認に測定は大いにアリだと思います。ですがこれを測定してサブをちょっと動かしてまた測定して…とかは余りにも非効率なので基本的には耳でやるのです。
B.遅延を考慮する
『サブウーファーの遅延を考慮した位置に置く』。具体的にはメインスピーカーより2m以上はリスポジに近い位置が望ましいです。近過ぎる分にはサブ次第ではディレイかけられるのでOK。AとBとを両方満たす位置はかなり限られるでしょう。『超低音の時間差なんてわからない』という人はオーディオエアプ。
ちょっと蛇足
今回は1台の為のセッティングなのですが2台使用の話も少しねじ込みます。
2台置きは散々書いてますが『圧倒的な利益』があります。定在波キャンセリングによる超速の収束が余りにも強く、これから見れば如何なる超高額超物量スピーカーも速度や定在波の無さ(均一さ)では勝てません。
そして2台置くのにharmanが推奨する位置の例です。この図は4台用ですが同じことです。
なんでこんな配置かというと『2台のサブウーファーが部屋に起こす定在波の起こりを互い違いにして打ち消す為』です
タイムアラインメントから考えると上の図の『横壁沿いの真ん中』か下の『背後の壁、1/4のところ』でしょうかね。なお実際この通りでなくても全然上手く行くというか部屋が変形だと役に立たない!ので大抵は上述の通り『耳でやる』ことになります。
とは言え2台置きでもまずは『1台目を完全な位置に置き完全な調整を施す』事が大事なので取り敢えずこの記事を進めましょう。
2.調整
調整の流れを書くとこんな感じ
音量1回目→cut off1回目→位相1回目→cut off2回目→タイムアラインメント→音量2回目(ディテール)→位相2回目(ディテール)
え、もう無理?大丈夫、見た目程大変ではありません。難しいのは音量のディテールですかね…とは言えこの時点で90点は行きます。そして我が国のサブウーファー調整は平均3点くらい(マジです)なのでこれでも別次元です。
まず音量をスイープで(敢えて測定ではなく)適当に合わせます。100Hz位まで大きなエネルギー差がないようにしましょう。簡単ですね(音量1)
さてこの状態で何となくcut offを考えます。まあ余程大型SPで無い限り35から50…本当に小型SPだと70まではあるでしょうか?適当にセットします(cut off1)
ここでcut off周波数のちょっと上(40なら45とか)の周波数のサイン波を流します。そして位相をクリクリ動かして最も大きくなる所を探します。場合によっては逆に最も小さくなる所の方がわかりやすいケースも。最小を探した場合は無論180度反転させます。(位相1)
さて、これで音の大枠は完成しました。サブウーファーはパズルのようなもので、なにかを動かすには他を先に動かす必要があったりするのです。例えば音量がめちゃくちゃでは位相の調整は極めて困難です。
では此処で初めて『音楽』を使います!ベース単発を使いましょう。言うまでもないですが打ち込みではなく本物で。ブライアンブロンバーグのwoodとか…
究極は魔界の聖典『stereo2016』でしょうね。eonkyoで販売中も8月でダウンロード終わる可能性。急げ!(激しいステマ)
で、ベースでちょっと低めのクロスから上げていくと濁る筈です。そのギリギリの狭間を狙います。これをサイン波でやると微調整が出来ません。(だって目視で1Hz変わってもどちらが正解かわからないでしょ?)でも自然界の音や楽器で耳でやると1Hzにある天国と地獄がわかります。(cut off2回目)
さて、ここまで調わないとタイムアラインメントって良くわからないです。あとリスポジ付近に置けているとそんなに重要な項目ではなかったりします。これもベースで構いませんが、タイミングが合うと当然ですがエネルギッシュかつスッキリします。ただサブが比較的リスポジ付近に設置されてるとディレイ0がベストはあるあるですのでそれを念頭にいれつつディレイをクリクリしてください。(タイムアラインメント)
さて此処までは簡単です。字面だけ読んでるとヤバそうですが少し認知が開かれれば誰でも可能です。此処からがフォースの世界。音自体を聴いては出来ません。しかしわざわざ書いているのですから全員『入門』して頂きます。Yes!! We can do it !!
さて、音量のディテールです。まずは女性ボーカルをご用意下さい。バックがうるさくなく声も自然な録音が良いです。エンジニア様なら録っただけのボーカルが有るなら最高。
ボーカルがクリアかつ最も力強くなる所を探すのです。低音を聴いてはなりません。あくまで『全体の印象、パワー』を聴くのです。音量を上げすぎると濁ります。下げるとエネルギーが無くなります。上から下へ、下から上へを繰り返して目星の範囲を狭めてください。個人的には上から下げて行ったほうがわかりやすい、かな?と思います。『あ、ナヨナヨしたな』とかわかります。
まだ音量は終えてません。いよいよファイナルです。ホールで録られたオーケストラ音源を用意して下さい。これは女性ボーカルと違って古い必要は無いです。低音部の奥行きも聴きたいのでティンパニとかグランカッサがある程度活躍して欲しい。空間の奥行きを聴きたいのでワンポイント録音だとベターですがきちんとしたマルチマイクでも全然可能です。
さて、此処からは1dBの中の天国と地獄を見ていきます。先の女性ボーカルで詰めたなら、±1dBの中に至高の領域があるはずです。(もしかすると既に合ってるかも?) 至高の領域から1dBでもずれると低音が(ティンパニとか)前に来てしまいます。裏を返せば至高の領域は奥に行く筈です。そして奥に行った状態だと全てに置いて自然界の摂理と整合性が取れ、空間自体の奥行きが明らかに深くなります。
無論何を聴いても音の広がりが違います。それはサブウーファー無しと比べても、です。正しい音場は正しい低音から生まれるのです。(音量2回目)
さて、最後に改めて位相を弄ってください。此処まで調整しないと見えない物があります。手法は同じで、cut offの少し上の正弦波を流します。音量とは違い1度に天国と地獄が…とはなりません。しかしさっきよりは数度の違いが大きく感じる筈です。これがずれると音楽の中でエネルギーが希薄な部分が出来て印象として弱々しく、腰高に感じます。特にマスタリングエンジニアにはあってはならない(最も忌避される)問題です。なので最後の山を越えましょう(位相2回目)
長かったですね。お疲れ様です。
次回は『2台目の話』になります。大丈夫、1台目を完全にセッティングしてあれば余裕綽々で終わります。
“サブウーファー徒然2 調整編(超大巨編)” への14件のフィードバック
魔界の住人の教えに従いサブウーファーを2台買いました。(スピーカーも教えに従いME1)
しかし、サブウーファーの配置でおすすめされている「リスニングポイント真横の壁際」はうまくいかないようです。
理由がありまして、横7.7m縦4mの部屋をほぼ左右対称の横長配置で使用しており、リスニングポイントの壁際だとスピーカーより遠すぎるみたいです。
このような配置の場合どこに置くのが良いでしょうか。色々試しましたがサブウーファー重いし体力の限界です。
なんとそこまでやって頂きましたか!
恐縮です
そしてお疲れ様です、とても良くわかります
さて、なるほどこれは確かに下手をするとスピーカーよりも遠くなりうる条件です
ズバリ『背面』でしょう。
リスニングポジション次第ですがまずは背面の壁の端から1/4の位置。これが置けるならほぼ確実にディップは出来ません。無論そこに置けずとも背面壁を色々動かしていただければOKです
背面壁の素晴らしい所は『ステレオイメージに悪影響ゼロ』なところでもあります。
ありがとうございます!
まだちゃんとセッティング詰られていないのに、背面に設置したら今までより圧倒的に良くなりました!
魔界の教本を熟読してこれからしっかり詰めたいと思います。
本当にありがとうございます!
やはり上手く行きましたか
直感的にスピーカー付近に置かれがちなサブウーファーですが、背後にサブウーファーは実はかなり上手く行くケースが多いのです
いやあ、こちらこそ本当に良かったです!
ググったりしても全く情報が出てこなかったので教えて下さい。サブウーファー2台はどのように接続しているのでしょうか。
使用機器にもよるでしょうが、当方の環境だとプレイヤーにはRCA1系統しかなく、プリから出力すると電流がスピーカーに使っているXLRと分流するからかサブウーファーから音を出さなくても変な音になってしまいます。
初歩的で申し訳ありませんが教えて下さい。
滅相もないです、解決するまでお付き合いします
無論サブウーファー次第ですが最も簡単な解決案は『あるならばサブウーファーのスピーカー端子入力を使ってパワーアンプと繋げる』です
しかし、プリにXLR出力とRCA出力があって、そこから各々使って異音がするとは本来有ってはならないことです。
プリアンプ及びパワーアンプはなんでしょうか?
サイドに設置して定在波をキャンセルするというアイデアには驚かされました。
この場合、メインSPとSWのクロス周波数はどのくらいを想定されていますか?
スピーカー刷新とともにサブウーファーを導入した者です。
今日2台目が到着しセッティングしていましたが、1台目であれこれ苦悶していたのが信じられないくらい2台がしっくりきています。予算の関係もあり、KEF Kube8bというかなり中途半端なサブウーファーで妥協導入なのと、リビングオーディオで側面置きが難しいので妥協しまくりなのですが、サブウーファー・シリーズでコメントされていたこと(相当読みまくりました)がかなり首肯でき、魔界を信ずるものは救われると感じているところです。
配置は妥協の末、メインスピーカーの前面で同じ角度、カットオフはメインスピーカー特性とヒアリングの結果55Hz程度としてみました。(位相は0か180でいじれません。。)主にヒアリングとスマホ測定で大きな問題がないことを確認しつつやっていますが、低音のフラット化というより声や楽器が持つ幅広い音をなるべくもれなく再現するという意味でサブウーファーの有効性を実感しました。しばらくはこの環境でベストを探りつつ音楽を楽しみたいと思います。改めてありがとうございました。
おお、素晴らしいですね
そうなんです
2台の方が実は圧倒的に楽なんです
というより一台は本質的にどんな達人がやろうが不具合、不都合が出ざるを得ないこと。
さらに2台だと収束が測定上もとてつもなく早くなります。低音の収束をさせるためにハイエンドスピーカーはあそこまでコストをかけてフルメタルボディにして、またあるいは部屋を物凄い設えにするわけで、それ以上にかなえるデュアルサブは革命的手法です
55hzは大抵の場合良い筋だと思います
また悩まれたらおっしゃってください
まったくの無駄投稿なのですが、
サブウーファー2台導入後、家人から
「地震が起きた?」
「雷鳴った?」
とのサウンディングがあり、戦々恐々としているところです。たぶんセッティングがうまく行っていないと思うので、もう少し頑張りたいと思います。
おお、2台導入しましたか
なるほど、原因は無数に考え付きますね
一台から増やしたか、いきなり2台からなのかで理由の推察が変わってきますが
例えば…
1.定在波の谷が無くなりロスがなくなったが故に部屋の外にも均一になり大きく感じる
…書いてて可能性はあまり高くなさそうです
2.2台のセッティングにより位相が合ってなく、室内では打ち消されて音量を上げないとならず、外では打ち消されないので凄まじい音量となる
…これはかなり臭いですね
2台のサブウーファー同士の位相だけではなくメインスピーカーとでも起きます
3.いきなり2台スタートなら、仮にセッティング、位相などの調整が良くてもそもそも音量が大きすぎる
2と取り敢えず予想します
サブウーファーセッティング記事を参考にしながら、いただいた可能性をひとつひとつ検証していきます。ぼやきコメントにご丁寧な返信本当にありがとうございます。
さまざまご指導ありがとうございます。
サブウーファーの位相が0か180しか設定できないケースで「設置をフロントスピーカーと同じ向きで調整」しようとしてもムリとようやく得心しました。
拙宅では置きようがないと諦めていた「サブウーファー側面配置」で位相0を試してみたところ、低音のだぶつきが消えました。測定しつつやっていますが、f特上の低音はむしろなめらかで安定しています。。これから電源ケーブルなど必要なものを誂えます。この音を聴いてしまうと、配置ムリとか言っていられないですね!!
やはりそうでしたか側面配置は非常に有効です
理屈の上でも実践的にも有効でTHXも莫大な研究の元に勧めている場所のひとつです。
有効なのですが、サブウーファー後進国日本では『サブウーファーは前に無いといけない』みたいな謎の慣習があるのです。