真空管の深い沼


これを読むと真空管が厭になるかもね?

日本人のみならず、人間はブランドに弱いもの。昔から真空管の世界もブランド(メーカー)で語られて来ました。2A3や45、300Bや845を中心に出力管はそこそこ蒐集しました。45は多分極まってたのではないでしょうか?

そこで思ったのが『古かったりブランドがあるから良いわけではないな?』『新しくて素晴らしい物もあるな』と言うところです。

さて、今回上杉のプリで色々あって代表藤原氏とお話して『先代(故上杉御大)が資財をなげうち大量購入した松下超絶選別管の12ax7は貴重過ぎてお分け出来ないので壊れたら(壊れない)交換は致します』とのこと。

上杉佳郎

しかし送って帰ってくるまで聴けないと死亡するので代替の物を探したい。

上杉のプリアンプUBROS280の使用管は初段12ax7、最終段12at7である。

12ax7、12at7、12auの三兄弟は1947年頃にRCAが開発したオーディオ/発振器向け高性能ミニチュア管である。三極管がこのサイズで2つ入っている。すげえなあ。それぞれ増幅率(μ)が100/60/20位。何故か12at7はほとんど使われない。

すげえんだがそれが故に繊細で製造が難しいのか音のバラつきがデカイ気がする。実際測定上も玉石混淆。そんな難しい連中なので本能的にあまり近寄らないで居たのだが仕方ない。

何しろ1974年の記事(森川忠勇)で12ax7はtelefunkenとGEで10dbもSNに差が有ったという…真空管って怖くない?


仕方ないので真空管に於いては我輩が知る限り最高の経験値を持つ人に話を訊いてみた。

GAVAN、という方である。

真空管に詳しい人は沢山居れど費やしたコストなどではそうそう勝てまい。我輩はことルームチューンやアクセサリーに心血を注いだが、真空管で同じ様な所業は時代的にももはや不可能。別の山を登頂した御仁のお知恵を拝借。

剪定して抜粋

>

現代球では、エレハモが望外に高性能でした(好みという意味ではありません)
今までで一番良いと思ったのは、ムラードのM8137の選別球でしたが、これは入手が難しいと思います。
12AX7は同ブランドでも経験的に当たり外れが非常に大きく、複数の球のバランスを取った選別球は、適当に入手したヴィンテージ球を大きく超える出音だった、というのは何度も経験しています。

>仰せのとおり、選別球を使用することが最後の最後に詰める時に重要になると考えています。
12AX7の様な増幅率の大きい球は、真空管全盛期の球でもばらつきが大きいように感じます。
上杉のプリ球の件でありましたか。
上杉に限らず、責任あるブランドの場合、何百本の中からの特別選別でしょうから、適当に持ってきて音質的に超えることは相当困難であろうと想像します。
当方のM8137は、未だ真空管が市場に潤沢にあった1990年代に、とあるビルダーさんに数百本のなかから選別していただいたものです。ムラードというと若干緩めで煙いような味があるのですが、印象が大きく異なり、テレフンケンも真っ青のキレ味です。
この球はチューブチェッカーの成績も優秀でしたが、チェッカーの結果が優秀でも、音質的に好ましいのとは別というのも何度も経験しています。残留雑音などはチェッカーで測れませんし、エージングでも変わりますので。
当方のGM70も、出力管はウクライナから30本以上輸入して選別しました。


地獄の如き…

数百本の屍の上の2本である

数十、数百からの選別。ブランドより選別。個体差。『telefunkenがー』とか言ってるようではまだまだ児戯という事ですな。これを買えばいい、という物はない。現代生産されている球を沢山買ったほうが良いかも知れません。

事実、845あたりも3Dブリンタ生産の中華最新最高の選別球が圧倒的でした。ヴィンテージの高名な球をワンパン。

ね、真空管怖いでしょ?


“真空管の深い沼” への2件のフィードバック

  1. いやいやいや。
    拝見して汗が噴き出しております。
    私なんぞ足元にも及ばないほど真空管に精通していらっしゃる諸先輩方の手前、出過ぎたことを申しましたかも知れません。
    どうかご容赦を~(大汗)

    しかしながら、定石を疑うことも大切かと…(^^)

    • もうこれだけやり尽くした方はもうほとんど鬼籍に入られておるのでは?
      現代では到底不可能な事を現代でやってらっしゃる
      とんでもないことです

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