エナメル線と言っても広うございますな。
- 乾性油
- ホルマール
- ポリアミドイミド
- ポリエステル
- ポリエステルイミド
- ポリウレタン
辺りでしょうか。リッツ線も基本的にはいずれかで出来ています。
音を決めるのは誘電率、静電気の起きやすさ、振動系(硬度や厚さ)など色々と複雑です。
歴史的には概ねこの順番です。乾性油は大体はシェラックワックスという物でラックカイガラ虫の分泌物です。こわっ
しかもこれだけ異様に歴史があり、少なくとも正倉院にはありますな。なお使い方は外用薬ですけど。バイオリンの塗装にも使われ音は良いようです。正確には『あまり振動を殺さないから音が良い』のと『周波数特性かフラットだから』のようですな
これはバイオリンの塗装としての研究です
小幡谷英一(2016) 木製弦楽器に使われる樹脂の特性. 接着学会誌 52(10), 316-320
JLが漆、Sがシェラックですな。圧倒的フラットでかつ振動を殺しません。共に油です。何しろエナメル線を中国語で『漆包線』と書きます。
そしてシェラックのみならず油系は大抵誘電率は低い。(漆はわからない。水とのエマルジョンなので誘電率高いかも?)おまけに静電気的には無敵に近く、最早欠点は見当たらない。欠点があるとするなら存在しないこと。
しかしそんなエナメル線などまず見つかりません。乾性油を除いてどれが優れているのか?電気特性だけならほぼ全面的にポリエステルイミド(EIW)です。誘電率は群を抜いておりPTFEに匹敵。静電気も弱め。なお機械的に弱いのでレア。売ってるの見たこと無い。静電気ならホルマールがダントツ。
ポリウレタンは全方位で良いこと無い。
と言うわけでポリウレタンなブラックエナメル使うくらいならシェラック塗ろうぜ。シェラックコイルとかトランスとか胸熱。ハイエンドというならこのくらいやって欲しいよね。
もしエナメルワイヤーの強みがあるとするならば『極細線に重さを与えずしかし多少の制震をする事』だと思う。なので相応の理由と覚悟がない限り難しいのでエナメルに手を出すべきではない、ということです。